加速する少子化が、地域の高校教育の基盤を揺るがしています。過疎化が進む地域では公立高校の定員割れが常態化しています。統廃合が進むと、さらなる人口流出の要因になるとして、地元自治体の危機感は強くなっています。
文部科学省の学校基本調査によれば、全国の公立高校の生徒数は昨年約193万人で、最多だった1989年の半数以下に減っています。公立高校の数も、1987年の約4,200校から約3,500校に減少しています。過疎地を中心に高校の統廃合が進んでいます。高校進学率が99%に達する中、公立高校が全くない市町村は全国で約3割に上っています。全国の15歳人口は、2022年の107万人から、2036年時点で81万人に落ち込み、24%減少します。
1学年に1~2学級しかない小規模校が増えており、文部科学省の調査では全国の公立高校の1割を超えています。小規模校は教員の配置が限られ、学習環境の確保が課題となります。高校教育は専門性が高く、選択科目も幅広く、教員が少なければ多様な科目を開設しにくく、生徒の進路希望に合った指導も難しくなります。
小規模校に通う生徒らの学習機会を拡充するために、文部科学省は2015年に高校の遠隔教育を制度化し、年間2コマ以上の担当教育による対面授業実施などを条件に、双方向型オンライン授業の単位認定を可能としています。しかし、実験や実習、探究活動などは対面が望ましく、生徒の評価もオンラインだけでは難しい面があります。急速な少子化は、今後首都圏や近畿圏の高校再編にも影響する問題です。
(2023年5月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)