厚生労働省の人口動態速報によると、2021年に生まれた赤ちゃんの数は、約84万人で過去最少を記録しています。2020年より約3万人、率にして3.4%減少しています。2月発表の速報値は、日本に住む外国人が含まれ、日本人だけだと80万~81万人程度と予想されており、80万人以下は避けられそうです。
将来の出生数を左右する婚姻件数は、戦後最少となっています。2021年の件数は51万4,242組で、2020年に比べて2万3,341組(4.3%)減っています。戦後のピークから比べると、半数以下にまで減っています。日本では婚姻後に出産するケースが多く、婚姻件数の減少は将来の出産減につながります。コロナ禍の2年間で、およそ11万組分の結婚がなくなったとの試算もあります。
コロナ禍では、休業や就業時間の減少などで収入が減った人が多く、婚姻後の生活不安から二の足を踏む若年層が多いと思われます。出生減に歯止めを掛けるため、政府は2022年度から不妊治療への保険適用を決めました。金銭面の不安から不妊治療の開始や継続をためらうカップルは多く、負担減につながる保険適用で治療に取り組むカップルは、増える可能性が見込まれていますが、少子化に歯止めをかけられるとは思えません。
長年にわたる少子化で、親となる世代の若者が減少しています。コロナ禍で2021年の出生数は1月、2月に大きく落ち込みました。少子化対策に特効薬はありません。高齢者の社会保障制度を効率化しながら、子どものための予算を確保するしかありません。政府は、2023年4月に子どもに関する政策の司令塔となる子ども家庭庁を発足させます。こども家庭庁を中心に少子化対策を前面に押し出す大胆な政策を進めなければ、社会保障制度が破綻し、国家存続の危機になりかねません。
(2022年2月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)