少子化対策を考える上で重要なのは、子育てにおける男女平等の視点です。男性の家事・育児負担割合が高い国ほど出生率も高いという正相関があることはよく知られています。子どもを持つかどうかを決めるにあたっては、夫婦の合意が大切です。
妻が子どもを持ちたくないと思っている夫婦では、夫の家事や子育て負担の割合が低いことが分かっています。子どもを持つとその負担は主に自分にのしかかると妻は見通しており、それゆえに新たに子どもを持つことに抵抗感があるとされています。少子化対策の主な原因には、妻の子育て負担割合が大きいことが関与しており、出生率を増やすには子育てにおける男女平等にいかに近づけるかがポイントとなります。
総務省の社会生活基本調査によれば、2016年の日本の男性の家事・育児負担割合は17%ほどで、これは先進国としては最低水準です。これから日本が歩むべき少子化対策の第一歩は、男性を家庭に返すことにあります。新型コロナウイルス感染症の流行下で、子どもを持つ男性がテレワークを行うようになった結果、家事・育児時間が増え、仕事よりも家族をより重視するような価値観の転換が見られたことが明らかになっています。カナダのケベック州やスペインの研究では、男性が育児休業をとり、子どもが生まれて最初の1~2カ月を家で一緒に過ごすと、3年後の家事育児時間が2割程度増えたという研究結果が報告されています。
男性を家庭に返すための選択肢は、休業だけに限りません。労働者の健康に留意しつつ、日本社会でよく見られる長時間労働を減らし、テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方に関する制度を導入することも効果的です。また、それらの制度を活用することに対する企業、個人にインセンティブを付与することも、少子化対策として重要であると思われます。
(Wedge May 2021)
(吉村 やすのり)