希少疾患に対する薬剤開発

希少疾患とは、患者数の少ない疾患の総称で、世界で約7千種類あるとされています。国によって定義が異なり、日本では対象患者が5万人未満、米国では20万人未満、欧州では患者数が1万人に5人未満と定めています。適切な治療法や有効な医薬品が乏しく、生活に重大な支障がでる難病が多いのが特徴とされています。臨床試験で患者の確保が難しいほか、遺伝子組み換えなど高度な治療技術が必要となります。収益が見込みにくいことから、製薬会社の開発が進みませんでした。
しかし、AIやデータ解析技術の進展で、新薬開発は効率化が急速に進んでおり、市場が小さい希少疾患でも収益化が可能になりつつあります。希少疾患における日本の優位性は、高いとされています。島国で希少疾患の原因となる遺伝子を遡りやすいとされています。欧米に比べて難病指定された患者に手厚い制度があり、対象患者数が少なくても、新薬の承認を受けやすい側面もあります。
公的医療保険の費用拡大に伴う薬価の引き下げ圧力もあり、がんや生活習慣病向けの製品は、今後収益が下がるリスクがあります。しかし希少疾患はほかに有効な治療薬が乏しいほか、患者数も少ないため、財源への負担は限られています。競合する企業も少なく、中長期にわたり薬価の維持や収益確保が期待できます。

(2019年3月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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