帝王切開の増加

 近年、わが国においては高齢出産に伴う妊娠合併症の増加、早産率の上昇などにより帝王切開による出産が増えてきています。厚生労働省によると、一般病院で2014年に24.8%に達しています。帝王切開を経験すると、子宮破裂のリスクを考慮して次の出産でも帝王切開になることが多くなります。
 ブラジルでは1970年代以降、医療技術の進歩などに伴い、帝王切開が増え始めました。帝王切開率は2000年に約38%でしたが、2009年に自然分娩(無痛も含む)の割合を上回り、2015年には約56%にまで増加しています。民間病院では約85%に上り、帝王切開大国とも呼ばれています。帝王切開が多い背景には、医師や妊婦が事前に出産の予定が立てやすく、自然分娩より短時間で済みます。民間病院では出産に伴う医師の報酬は時間ではなく、回数に応じて決まります。それが短時間で済む帝王切開が選ばれやすい理由となっています。

 わが国でも周産期母子医療センターや大学病院など高次周産期医療施設では、ハイリスク妊娠が集まり帝王切開率は30~40%に達しています。わが国では、諸外国とは異なり、病院ではなく診療所で半数の分娩が取り扱われています。それにもかかわらず、周産期死亡率も妊産婦死亡率も低く、世界でもトップクラスの医療が提供されています。わが国の産婦人科医療のクオリティの高さを示しています。帝王切開率も2割前後を示しています。WHOは母子の健康リスクを避ける目安として、帝王切開の割合10~15%に抑えるよう推奨しています。医学的に不必要な帝王切開術は避けるべきであり、母子にとって最適な出産を行うため、出産に関する情報を妊婦に提供すべきです。

 

(2017年12月7日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。