経済協力開発機構(OECD)によれば、2019年の平均賃金は、2000年比で米国と英国が7割近く、フランスやドイツは5割強上昇しています。しかし、日本は対照的に、5%弱の低下です。他の先進国と比べて賃金の低迷が際立っています。背景にあるのは生産性の低さです。1人の就業者が生む付加価値(労働生産性)が、日本は米国の6割にとどまっています。7~9割の英独仏を下回っています。
根底には、雇用を守る慣行があります。企業は雇用を維持するあまり、不採算の事業を温存し、収益が伸び悩んでいます。労働組合も雇用の確保を賃上げより優先し、賃金の低迷に拍車がかかっています。外国人など社外の人材を取り込んで、多様性に富む組織にし、イノベーションを起こすには、年功制など日本型雇用システムの見直しが不可欠です。
(2021年3月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)