厚生労働省の公表によれば、男女の大きな金額差が明らかになっています。過去30年並みの経済状況が続くケースでは、2024年度末で50歳の男性が65歳で受け取り始めた場合、平均で月14.1万円です。50歳女性だと9.8万円で、4万円以上の差がみられます。
夫が厚生年金に加入していた人は、一定の条件下で遺族厚生年金を受け取れますが、遺族年金の現在の受給者の金額を見ると、6割以上の人は本人の基礎年金も含めて月10万円未満で、現在は夫とともに夫婦の年金を足せば暮らしていけるという女性も、夫が亡くなった途端に困窮するリスクがあります。
大きな男女差の要因は、現役時代の賃金格差の大きさです。老後の年金は基本的に、現役時代の報酬と保険料を納めた期間に比例します。賃金が低く勤続年数も短いと、金額は低くなります。現在の中高年世代では、夫が仕事、妻は家事育児という役割分業が多いのですが、妻が夫の仕事を支えてきたとしても、夫が亡くなれば、妻に夫の年金を受け取る権利はありません。男女役割分業は、現金収入が少なかった側である女性に老後の貧困リスクをもたらすものです。
女性の老後の年金水準を引き上げて貧困リスクを抜本的に解消するには、女性の賃金水準の引き上げが欠かせません。

(2025年4月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)