国内で商業施設や工場などの建設が停滞しています。建設会社が手元に抱える工事は金額にして15兆円を超え、過去最大に膨らんでいます。かねて深刻な人手不足に、2024年からの残業規制が拍車をかけています。生産性の向上を急がなければ、民間企業の設備投資や公共投資の制約となり、日本の成長力が一段と下振れしてしまいます。
総務省の労働力調査によれば、2024年の建設関連の就業者数は10年前に比べて6%減り、477万人に減少しています。このうち65歳以上が80万人と2割近くを占めています。高齢化率は10年間で5ポイント上がっています。2024年4月に始まった時間外労働の上限規制で、建設業は原則として月45時間、年360時間までしか残業できなくなりました。結果として2024年の1人あたりの総労働時間は前年から32.3時間減っています。マイナス幅は全産業平均の14.3時間を上回っています。
日本の建設業は中小が多くITの導入が遅れています。建設従事者が使える省人化などのソフトウェアの1人あたり導入量は、フランスや英国の5分の1にとどまっています。業界全体で工事をさばく能力が低下した状態が続いています。働き手の確保が難しいのなら、デジタル化などによって生産性を高めるしか道はありません。

(2025年6月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)