後期高齢者の医療制度

75歳以上の高齢者は働いて収入を得るのが難しくなる一方、医療機関を受診する機会は増えてきます。75歳になると健康保険は、国民健康保険などから後期高齢者医療制度に移ります。都道府県単位で運営されており、現在の保険料は、平均で月5,857円です。受診時の自己負担は、原則1割に抑えられています。43兆円の医療費のうち、16兆1千億円が75歳以上にかかっています。このうち4割が現役世代からの仕送りで賄われており、その負担は年々高まっています。大企業の社員が加入する健康保険組合からの仕送りは、2018年度で1兆9千億円で、制度が始まった2008年度から1.5倍に増えています。

 

厚生労働省によると、75歳以上の1人当たり年間医療費は、2017年度時点で平均92.1万円です。65歳未満は18.7万円で、後期高齢者にかかる医療費は5倍近くなっています。1人当たりの年間外来受診回数は、75~79歳で33.4回にも達しています。65~69歳は21.8回、70~74歳は28.4回でした。政府は75歳以上の後期高齢者の医療制度に関し、外来診療の窓口負担を原則1割から2割に引き上げる調整に入っています。医療費負担をめぐる世代間格差が広がらないようにする狙いがあります。

このうち現役並みの所得がない75歳以上の後期高齢者の窓口負担について、70~74歳と同じ2割にする調整を進めています。これにより、最大2千億円超の給付費を抑制できるとされています。低所得の後期高齢者には生活に過度な負担がかからないようにする措置も検討されています。患者が負担する年間医療費に上限を設ける案や、年収80万円以下の人は1割を維持する案が浮上しています。

(2019年11月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

 

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