特許が切れた新薬と同じ成分で安価な後発医薬品への置き換え比率が、2022年度に8割を超えました。政府目標をほぼ達成したものの、高齢化が進む日本では薬剤費は高止まりしています。政府は後発薬を処方する病院や薬局の優遇などで普及を促してきました。2022年4月から後発薬への置き換え率が85%以上の薬局で280円、90%以上で300円が調剤基本料に加算されています。
2022年の厚生労働省の薬価調査によれば、後発薬への置き換えによる医療費の圧縮効果は年間1兆7,000億円とされています。財務省は既に後発薬のある先発薬の薬剤費は、2021年時点で年1.9兆円規模と推計しています。後発薬の薬価を半分以下と仮定すると、全て置き換われば1兆円程度を圧縮する余地があるとみられます。
後発薬は多くの企業が同じ成分の薬をつくります。1万品目以上があり、多くは少量生産です。価格面での競争は激しく、収益力が高まりません。薬価下げや厳しい品質基準などを背景に、日本の後発薬市場は魅力を失っています。
(2023年8月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)