心不全の心臓再生

心不全患者の筋肉から採取した細胞を培養して、シート状の細胞の塊をつくり心臓に移植し、機能の回復を促す試みが企業によって事業化されることになった。自身の細胞を使うため、拒否反応の危険性が低い。心不全が悪化すると、人工心臓や心臓移植が必要になるが、承認されれば悪化前に治療し、患者の身体負担を軽くできることになる。細胞シートを使う心臓の再生医療は、世界で初めてである。これまでに国内で実用化された再生医療の対象は、火傷などの皮膚に限定されていた。

 治療では患者の脚から筋肉組織を採取し、企業ないの研究所で、筋肉に変化する細胞を取り出して培養する。約1カ月かけて細胞を直径5センチ程度の薄い円形のシート状に形作り、病院に送る。シートを心臓の傷んだ部分に貼りつけると、細胞が心臓に働きかけて新たな血管が作られ、機能が回復する。これまで心不全や、心筋梗塞に対する再生医療の手段としては、iPS細胞が考えられてきているが、実用化にはまだまだ時間がかかる。この方法はすでに大阪大学で臨床研究として実施され、大部分で症状の改善がみられたとされている。企業が参入することで、国内に20万人いるとされる心不全の患者に福音となることが期待される。

 

(2014年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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