心大血管疾患による妊産婦死亡

妊産婦死亡報告事業が開始された2010年以降、心大血管疾患が原因(肺血栓塞栓症を除く)の妊産婦死亡累積数は50例です。既存の心血管疾患が増悪して死亡する症例よりも、大動脈解離や心筋梗塞などの突発性で致死的な心血管疾患により死亡する症例や、未診断の周産期心筋症や肺高血圧症が重篤化し、ショックや心肺停止状態で初めて診断される症例を多く認めます。

心血管疾患による妊産婦死亡を減らすためには、周産期診療において、HEARTSに心がけることが大切です。

妊産婦死亡を来し得る心大血管疾患においては、家族歴・既往歴以外の心血管危険因子を有するものが少なくありません。妊産婦死亡原因となる心大血管疾患ごとの危険因子を表3に示します。危険因子に着目し、常に合併症リスクに注意することが、早期診断につながります。

心血管合併症ごとに好発次期があり、それらの合併症による妊産婦死亡についても同様の好発時期があると言えます。図1に、2010~2022年の心大血管疾患(肺血栓塞栓症を除く)による妊産婦死亡の、原因疾患とその症状の出現時期を示します。これら合併症の好発時期を念頭に置くことが、早期診断につながります。(図1)

(日産婦医会報 令和6年4月1日号)
(吉村 やすのり)

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