性的少数者の存在が急速に可視化されたのは、ここ10年ほどです。1990年代以降に当事者の文化人らが公表し、その後性同一性障害という言葉が広まりました。性的少数者の人権について議論が盛んになったのは、2000年代に入ってからです。さらに同性婚など海外の動きに影響されて、日本でも報道が増えてきました。しかし、LGBTなどの性的少数者への偏見や差別はいまだ根強いものがあります。頭では理解したつもりでも、実は戸惑いを感じている人が多いと思われます。我が子から、自分は同性愛者と明かされた家族は、それをどう受け入れて良いか分からないと思われます。
広島修道大学の河口和也教授は、LGBTに関する全国調査を実施しています。自分に身近であればあるほど、同性愛について嫌悪感を抱く傾向が強いという結果が出ています。家族から理解を得ることが難しいことが分かります。差別や偏見には、合理的な理由がなく、解消は簡単ではありません。まずLGBTの存在を知ることが最初のステップです。当事者と話せば、性的指向や性自認の違いを除けば、同じ人間じゃないかと分かります。
(2018年10月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)