性的虐待の増加

わが国においては、家庭内での子どもの性被害の全体像は正確に把握されていません。厚生労働省の発表によれば、2018年度に全国の児童相談所が対応した性的虐待は1,730件です。児童虐待防止法で性的虐待は保護者からの行為と規定されており、数字にはきょうだいや祖父母、おじおばなどからの性暴力は入っていません。朝日新聞の発表によれば、加害者1,040人の属性をみると、実父469件、実父以外の父296件、実母66件、実母以外の母4件で、保護者以外は、母の恋人88件、兄弟姉妹63件、祖父母18件、おじおば29件などでした。

家庭内で受ける性暴力は、特に影響が甚大です。本来なら守ってもらえる存在である親などからの加害は、家という子どもの安心・安全の基盤を根底から壊すことになります。魂の殺人とも呼ばれる性暴力の中でも、子どもが暮らす家で、家族や親族から受ける被害の影響は、特に深刻だと言われています。子ども達の心と命を守るためには、まずは社会が、そんなことあるはずない、見たくないではなく、その辛い現実があることを直視する必要があります。
国際基準では、加害者を保護者に限定せず、家庭内外での優位性に乗じた性暴力のことを性的虐待と規定しています。保護者の行う行為に限定した日本の児童虐待の定義を変える必要があります。

(2020年7月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。