慢性腎臓病(CKD)は、わが国の成人の8人1人の割合で発症しています。慢性腎臓病は腎臓の機能が徐々に低下していく病気の総称です。患者数は1,300万人以上とされています。糖尿病からくる糖尿病性腎臓病、腎臓に炎症が起こる慢性糸球体腎炎、動脈硬化で腎臓が硬くなる腎硬化症などがあります。放っておくと腎不全になり、食事制限や人工透析が必要になります。脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まることも分かっています。
たんぱくが出るなど尿に異常があります。また腎機能を表す数値であるeGFR(推算糸球体濾過量)が60未満になります。このどちらかまたは両方の状態が3カ月以上続くと、慢性腎臓病と診断されます。eGFRは血液中のクレアチニン値、年齢、性別から計算できます。クレアチニンとは筋肉から出る老廃物で、腎機能が落ちると排出されず、血液中に残るようになります。eGFRは年齢を重ねるほど下がりやすくなります。
腎機能が衰え、eGFRが低くなっていくと、倦怠感や貧血、むくみ、夜間頻尿などの症状がみられるようになってきます。しかし、糖尿病などと同じく、かなり悪くならないと症状は出てきません。尿が泡立っている場合、たんぱくが出ている可能性があります。朝晩の体重変動も注意します。夜間頻尿があって、就寝時よりも起床時の体重が1㎏以上減っていたら要注意です。
生活習慣病予防が慢性腎臓病の予防につながります。糖尿病と同様にリスクが高いのは高血圧です。腎臓の機能が低下すると、血圧も上がりやすくなります。予防には第一に減塩です。塩分を控え、高血圧の人は降圧薬で血圧を下げることが大切です。動脈硬化を進めるたばこは厳禁です。太らないような食事をし、運動を習慣づけるのも大切です。結果的に人工透析や腎移植が必要になる可能性もあり、早期発見と予防が肝心です。
(2021年10月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)