慶應義塾大学病院産科におけるNIPTの臨床研究

 当大学ではNIPTは多様な出生前診断の一種として位置づけ,実施します。

日本医学会の指針に基づき,NIPTは臨床研究として実施し,実施施設の審査・登録を行ううえで,臨床研究であるため,臨床研究に関する同大学医学部倫理委員会における倫理審査を経て日本医学会の審査登録の申請に至りました。

この間,当大学の臨床研究の審査において,クリニカルリサーチセンターからの指導がありました。診断に関するアルゴリズムの内容,特に日本民族におけるデータが得られていないうえでのアウトカムを検証することなしに行われる臨床研究の意義について強い疑問が投げかけられました。それに対して,固定した方法でのデータ集積と結果の検証を行うためにNIPT実施例に対する,児の染色体の確定診断を実施要項に入れ,検査の精度等についても検証をする計画とする旨の指導を受けて承認に至りました。

 また,遺伝カウンセリングについては,出生前遺伝学的検査を希望する全例に対して,慶應義塾大学病院産婦人科および臨床遺伝学センター外来で臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーによる検査前後の遺伝カウンセリング体制が確立され,長年に亘り,実施されております。従って,NIPTコンソーシアムが研究目的としている遺伝カウンセリングに関する臨床研究への必然性は余り認められない状況にあります。

 検査委託会社は,Massive shotgun方式よりもfalse positive rateを限りなく0に減少させることのできるSNP解析による方法を用いるNatera社を選択しました。

(2013年11月1日 読売新聞夕刊)

(吉村 やすのり)

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