政府は、約720万の専業主婦世帯の税負担を軽減しようとする配偶者控除を見直そうとしています。その適用を受けるために、わざわざ働く時間を減らす人が多いためです。配偶者控除の見直しは、共働き夫婦を含め約2000万世帯近くに影響を与える大型改革です。配偶者控除に手をつけるなら、所得税制を全面的に見直すべきだと考えられるようになっています。有力視されているのは夫婦控除で、夫や妻のそれぞれの年収にかかわらず一定額を収入から差し引く制度で、働き方に影響を与えず女性の活躍を後押しできる可能性がでてきます。
さらに退職所得控除も見直そうとしています。いまの仕組みでは、勤務期間が20年を超すと控除枠が急速に大きくなります。転職者に不利になり、多様な働き方をゆがめる控除を見直すべきだとの声もあります。また、自営業者と会社員の経費の取扱いの違いは、不公平感につながっています。働き方に影響を与えることなく、課税の不公平感を和らげる仕組みを作ることが大切です。
(2015年8月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)