抗凝固薬は、血を固めるのに必要なたんぱく質である凝固因子の働きを弱め、脳梗塞などの原因となる血栓をできにくくします。重い脳梗塞を引き起こす恐れがある心房細動や、脳梗塞の再発防止などに使われています。しかし、出血すると止まりにくくなる副作用もあります。治療をより安全に行うため、緊急時に止血できる中和薬が、近年相次いで登場しています。
抗凝固薬を服用している患者は、体をぶつけたり転倒したりすると、衝撃で血管が破れて出血しやすくなり、血も止まりにくくなります。これまで抗凝固薬で治療する患者が脳出血などを起こした場合、ワーファリンだと、凝固因子の生成に必要なビタミンKの投与や、凝固因子を含む血漿の輸血を行っていました。ワーファリンによる脳出血に対しては、ケイセントラという中和薬が使用されます。別の凝固薬プラザキサの中和薬プリズバインドも登場しています。これらの薬が効果的に使われるためには、患者側も備えが必要です。外出先で倒れ、救急で運ばれた場合、服用する凝固薬の手がかりがあれば、早期の治療につなげられます。特に高血圧の人は、薬をきちんとのんで血圧を下げ、減塩、禁煙、過度の飲酒を控える自己管理に心掛けることも必要です。
(2018年9月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)