放射性医薬品の開発

 放射性医薬品は、放射線を出す物質をがん細胞の内部に送り込み、放射線の力でがん細胞を破壊します。手術できない場所にあるがん細胞や通常の抗がん剤が効かなくなった薬剤耐性のがん細胞にも効果があります。オプジーボなどのがん免疫薬に続く次世代の抗がん剤と評価されており、製薬大手によるM&Aも相次いでいます。

 カナダのプレシデンス・リサーチの調査によれば、放射性医薬品の世界市場は2024年の67億ドルから、2033年には136億ドルに拡大すると予想されています。日本企業ではペプチドリームがノバルティスと提携し、新たな放射性医薬品の開発を進めています。放射性医薬品の開発は、製造完了後に時間が経過すると放射線の力が激減します。ノバルティスは、日本での普及拡大に向けて一部製造を担う工場を整備することを決めています。

 放射性医薬品は、世界で急速に普及が拡大しています。コストや放射性物質の取り扱いに関する規制、放射線を取り扱う専門家の不足といった課題もあります。特に日本は原材料となる放射性物質の製造や供給に関する規制が厳しいとされています。世界のがん治療の潮流に乗り遅れないためにも、早急な規制緩和と人材育成が求められています。

(2025年3月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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