政府の教育再生実行会議は、新型コロナウイルス禍の収束後を見据えて、小中高から大学に至る学びの総合的な改革を求めています。新たな感染症の流行や災害など不測の事態が生じた際、学びの保障が大切であると提起しています。
コロナ禍で浮かんだ日本の教育の遅れの一つがデジタル化です。OECDの調査によれば、日本は生徒の約8割が授業でICT(情報通信技術)機器を利用していないと回答しています。この割合は加盟国で最も多く、教科別に見ても軒並み最下位でした。
遅れはコロナ禍の長期休校で際立っています。米国や英国など主要国が速やかにオンライン授業に切り替える中、日本は2020年の休校中に、同時双方向型の遠隔指導をできた公立小中学校などが、設置者ベースでわずか15%にとどまっています。オンライン授業を普段から柔軟に取り入れ、コロナ禍のような非常時に備えるよう国に求めています。
大学の国際化も足踏みしています。2017年のOECD調査によれば、日本は、大学学部生のうち外国人留学生が占める割合が2.6%にとどまり、加盟国で最低レベルです。海外の有力大学は、コロナ前からオンライン教育に取り組んでおり、留学生受け入れが難しい中でも遠隔授業を充実させるなどして学生をつなぎとめようと努力しています。しかし、日本の大学は、優秀な留学生を獲得する競争で出遅れてしまっています。欧米で主流の秋入学を含めて入学時期を多様化するといった制度づくりも必要です。
(2021年6月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)