教育格差の増大

所得階層による教育費の差が広がっています。世帯年収が平均1,200万円超の層の支出が増え、2022年は初めて全平均の2倍超となりました。特に塾代の伸びが著しく、ほかの層の伸びが追いついていません。年を追うごとに差が広がるワニの口状態です。高所得者層に追いつこうと中低所得層が教育費の負担を増やせば、家計を圧迫して少子化が加速することになります。
家計への教育費の負担が重くなる中、学力差が拡大する懸念に加え、少子化への影響も危惧されています。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によれば、夫婦が理想の数の子どもを持たない理由のトップは、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからです。
教育費上昇の対策として、わが国では2020年度から住民税非課税世帯を対象に、大学などの高等教育が無償化されました。文部科学省は無償化が始まった2020年度に該当世帯の進学率が約10ポイント上昇したと推計しています。
日本の高所得層が教育投資を増やす中、今後中低所得層の教育費への不安や諦めは強まっていく可能性があります。どのようにして中低所得層への支援、教育の未来をデザインするのかが大切となります。

(2023年6月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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