うつ病などの気分障害は毎年100万人前後が発症し、増加の傾向がみられます。しかし、その診断には難しいものがあります。血液検査で診断する方法が実用化されています。うつ病患者では、リン酸エタノールアミン(PEA)という微量の化学物質が減少していることが明らかにされています。うつ病患者のPEA値は、治療とともに上昇し、再発すると下がるなど有用性を確認でき、ヒューマン・メタボローム社は診断用品としての承認取得を目指しています。
うつ病患者の診断の際、机の上にマイクやカメラを設置して、患者の声、会話速度、表情などを記録し、データを専門家による重症度の評価と合わせて人工知能(AI)に学習させ、発声の様子、表情などからうつ病の症状の重さを判定できるシステムも開発されています。通常、30分程度かけて実施する問診は、うつ病患者には負担であり、医師も時間が足りません。AIだと5~10分の会話からある程度の判定ができ、双方に役立つとされています。また、磁気共鳴画像装置(MRI)を使ったうつ病診断や治療の試みも始められています。MRIで画像を取りながら患者に頭の中で計算やしりとりをさせ、目の前の画面で脳の特定領域の活動がどう変わるか確認します。検査精度の向上やデータの集積により、科学的根拠に基づく治療の実現へ近づきつつあるとされています。
(2019年5月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)