がん細胞に薬剤で目印をつけて、放射線や光で破壊する新しいがん治療法が始まります。周囲の組織へ浸潤したり再発した治療の難しいがんへの効果が期待されています。がん治療では、手術や従来の放射線、抗がん剤、免疫療法に続く第5の治療法ともいわれています。放射線と薬剤を組み合わせ体へのダメージが小さく高い効果が期待されます。
2020年にも一般患者への治療が始まるのは、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)と呼ぶ放射線治療です。従来の放射線治療と違い、正常細胞をほとんど傷つけず、照射回数が1回で済みます。正常な組織との境界がはっきりしない病巣にも使える可能性が高く、PET検査と併用して治療前に効果を予測できます。ホウ素化合物を含む薬を患者に与え、がん細胞に取り込ませます。その目印めがけて中性子を衝突させ核反応を起こしがん細胞のDNAを壊します。治療は1回40分ほどで、正常な細胞はホウ素化合物をほとんど取り込みません。
喉や舌といった頭頸部のがんへの臨床試験が終了しました。国の承認の審査期間を6カ月に短縮する先駆け審査指定制度の対象に選ばれ、当局への申請を経て2020年にも承認される見通しです。住友重機の装置を導入し、治験に参加した総合南東北病院(福島県郡山市)が、2020年度の治療開始を目指しています。
(2019年8月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)