がんの増殖を助ける細胞や組織を狙い撃ちにして、間接的にがんをたたく技術が開発されています。がんの本体を攻撃する抗がん剤やがん免疫薬と併用すれば、効果改善を期待できます。治療が難しい膵臓がんなど、現在は生存率が低いがんの新たな治療方法となる可能性が出てきています。つまり、がんを守る免疫細胞をたたく材料を作ることにあります。脾臓が作る細胞は、がんをたたくT細胞などの働きを抑えてしまいます。そこで脾臓がこの細胞を作るのを防ぐ技術を開発することにより、T細胞が免疫細胞に邪魔されずがんを攻撃するようになります。
そこで細胞の生産を阻む化合物を、脾臓へ届ける脂質と一緒にマウスへ投与します。これにより大腸がんや乳がんの増殖を抑えることが分かってきており、10年後の臨床を目指しています。がんは周囲の細胞や組織を味方につけ、免疫細胞や抗がん剤の攻撃を巧みに逃れて増えてしまいます。そのため、がんの本体をたたく治療法だけでは効果に限界があります。このような、がんの味方の細胞や組織を狙い撃ちする研究は、難治性の膵臓がんなどを中心に国内外で盛んに行われています。
(2019年8月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)