経済産業省は、新しいエネルギー基本計画の原案を公表しています。2030年度は、総発電量のうち再生可能エネルギーで36~38%、原子力で20~22%を賄います。達成には多くの障壁があります。石炭火力はなお19%を占め、発電あたりの温暖化ガス排出量は、西欧諸国に比べても依然高い水準のままです。
問題は、2030年度段階も化石燃料に4割超を依存することです。地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定は、地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑える目標を掲げています。国連などは石炭火力の段階的廃止を求めています。日本は2019年度実績で32%を石炭火力で発電しています。原発の再稼働が進まず、再生エネルギーの本格導入が遅れたためです。
太陽光や風力などの再生エネルギーを、最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組むと位置づけています。電源構成に占める比率を、22~24%としてきた現行目標を36~38%へ引き上げています。2030年度まで残り9年で拡大を最も期待できるのは太陽光です。農地活用や送電網の整備などを進め、導入を後押しする必要があります。洋上風力や地熱発電は、短期間で増やせる量に限界がありますが、計画前倒しへ全力をあげるべきです。原発は20~22%の現行目標を据え置いています。達成は再稼働済みの10基に加え、再稼働を目指す17基全てが動かなければ不可能です。
(2021年7月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)