新型コロナやインフルエンザのウイルスに変異が起きても十分な効果がある汎用性の高い新型ワクチンを目指す取り組みが進んでいます。独ビオンテックと米ファイザーなどは、臨床試験を進めています。コロナ禍の収束だけでなく、将来の新たなパンデミックへの備えとしても期待がかかっています。
汎用型ワクチンが望まれる背景には、現在のワクチンの限界があります。新型コロナウイルスは、免疫をすり抜ける進化を続け、次々と新たな変異型や派生型が現れています。ワクチンは効きにくくなり、接種からの時間経過による効果の減弱も早まっています。変異型に対応したワクチンも登場しましたが、ウイルスの進化への後追いを強いられています。新型コロナ以前にもSARSやMERSが流行したように、今後も全く新たなコロナウイルスが現れる可能性は高いと思われます。インフルエンザも新型への懸念があります。
新たなワクチンに期待される性能は汎用性だけではありません。1回の接種で感染を長期間予防できることや、常温で保管でき、錠剤やスプレーなど注射よりも簡単に接種できるといったことを満たすと価値が高まります。新型コロナでは、米政府のワープスピード作戦をはじめ、世界的に大規模な資金が投じられ、開発から1年以内の早さで実用化しました。将来のリスクに備えるため、見合った投資をする必要があります。
(2023年1月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)