新しい性の捉え方(性スペクトラム)

LGBTのうちLGB(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル)は心の性と体の性が一致しています。しかし、T(トランスジェンダー)は心と体が一致していないため、性自認に従って生きたいと願っています。トランスジェンダーには、FTM(体は女性で心は男性)とMTF(体は男性で心は女性)があります。生活に著しい苦痛がある場合はGID(性同一性障害)と診断され、治療を受けることができます。
2015年頃から性を再定義する研究が広がり、完全な男、完全な女はむしろ少数派だということが分かってきました。性別は男女の2つではなく、双方の特性を持つグラデーションとみる性スペクトラムの概念が注目されるようになってきています。色々な性のバリエーションを持っている人が多くいます。
1人の人間でも、一生のうちで性的指向や性自認が変わることもあります。ここからが正常で、ここからが異常という線引きも簡単にできません。しかし、出産は女性にしかできないし、男女の生物学的な差は明確にあります。男女の違いは個性として認め、スペクトラムとしてみんなが持っていることを理解することが大切です。典型的な男女と違う部分があっても、それがその人の個性なのだと受け止めてあげることが大切です。男だから、女だからという固定的な考え方を少しずつ変えていき、教育の現場でも、性に多様性があることを子どもに伝えていくことが必要になります。
性とは人間の個性のことで、その人らしさを作っているものと理解し、何かができるのも、できないのも個性であり、様々なバリエーションがあります。人種や民族もグラーデションであるし、国境も人工的に引かれたものです。性の多様性のへの理解が広がれば、性別を尋ねることの意味がなくなってしまいます。同じ日本人でも性差が様々だという認識が広がれば、文化の違う外国人が、自分たちと違うのは当たり前だと受け入れる土壌ができると思われます。男と女という二元論からの解放は共生につながります。

(2022年10月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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