新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、新しい生活様式の実践が呼びかけてられています。ウイルスは、咳やくしゃみなどの飛沫に多く含まれ、直接飛沫を浴びたり、ウイルスがついたものの表面に触れたりして、手指から口や鼻を経由して喉に取り込まれることで感染します。ウイルスの特性を踏まえた対策が必要となります。英ケンブリッジ大の専門家は、各国の事例をもとに、300項目以上のリストをつくって公開しています。
ウイルスがついたものを指先で触らないように、エレベーターの行き先ボタンなどは指の関節で押す、ドアはひじや背中で開けるようにします。エレベーターの密閉空間を避けるためになるべく階段を使ったり、建物や店舗の入り口と出口を分け、一方通行にして人がすれ違わないようにしたりします。挨拶する際、欧米では一般的な握手やハグの代わりに、肘を突き合わせるエルボーバンプを行うことを提案しています。家族以外に予め会う必要のある少人数を選んでおき、交流をそのメンバーに限るようにしようとしています。感染を泡の中に閉じ込めるイメージからソーシャルバブルなどと呼ばれています。
通勤や買い物、冠婚葬祭など、どうしても外出が必要な場合もあります。職場に弁当を持参して昼食時に外出しない、家族内だけでなく、地域で買い物に行く代表者を決めるとされています。また、豪州では結婚式は5人まで、葬式は10人までとするとのガイドラインを定めています。
学校に関する注意点については、世界保健機関(WHO)が考慮すべき対策をまとめ、公表しています。例えば、机と机の間を少なくとも1m開け、休み時間をずらす、子ども達が教科ごとに教室を移動するのではなく、教師が子ども達のいる教室へ行く、なるべく屋外で授業をする、小さな子ども向けに定期的に手洗い時間を設けるなどです。
こうして新たな生活様式が、これまで進めてきた政策と逆行する場合もあります。ウイルスの流行で、プラスチックごみ削減のために世界的に減らそうとしてきた使い捨て容器が、広く使われるようになってきています。持ち帰りや宅配のほか、再利用の容器や袋をやりとりすることで、ウイルスに接触感染する可能性があるからです。コーヒーチェーンのスターバックスは、客の持参するマイカップやタンブラーの使用を一時停止しました。また、レジ袋禁止措置を停止したり、導入を遅らせたりしています。これもやむを得ない処置と思われます。
(2020年5月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)