新型コロナとの共存

新型コロナウイルスの感染拡大より、首都圏の1都3県には緊急事態宣言が発令されました。新型コロナウイルスは、無症状でも感染力があり、国内外を人が移動する限りはどうしても存在し続けてしまいます。ワクチンが完成しても、劇的な効果があるかは未だ不明であり、現在感染をコントロールできている国々でも、将来的には国際往来の再開により患者数が増加し、医療危機に襲われる可能性があります。
これまでのわが国の対策は、ハンマー&ダンスという方針をとってきました。これは、新型コロナがゼロにはできないウイルスであることは早期から認識していたため、増えたら自粛、減ったら活動再開のように感染者数増加の波が来るたびにその都度対応するという方針を取ってきています。今後は経済再開しながら、患者の増加が始まった段階で国民一人ひとりが自身の行動を見直して感染対策を行う意識を高める必要があります。患者が増えるのは国の失策であるという考えで責任を誰かに押し付けているだけでは、新型コロナと向き合って生活していくことや共存していくことはできないと思われます。
感染症の対応の基本的な考え方は、広げなければ良いと重症者を救えば良いの二つです。つまり、症状があり、自身の感染が疑われたら、自主的に仕事や会食を休んで拡大の原因にならないようにすることです。症状が増したら、病院に入院して適切な治療を受けなければなりません。体調のすぐれない人は休む、休ませるということを社会全体として受容し、実行していくことが大切です。2020年は別の厄介な感染症であるインフルエンザを例年以上に抑え込めています。国民一人ひとりの感染予防・対策への意識と行動が奏功している証左であり、インフルエンザウイルスにとっては生きづらい世の中になっています。
一人ひとりの感染予防の意識と行動こそが、新型コロナを打倒する鍵です。手洗いや距離を保つこと、換気をすることなどは難しいことではなく、大切なのはそれを継続することです。我々は新型コロナのことを今一度正しく理解して、正しく怖れる社会にすることが大切です。今年はこの感染症と共存することを決意する年にしたいものです。

(Wedge January 2021)
(吉村 やすのり)

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