新型コロナウイルスに感染して重症になる人もいれば、無症状で済む人もいます。過去に新型コロナと似たウイルスに感染した人は、新型コロナの発症が抑えられている可能性があります。これが交差免疫と呼ばれる現象です。2009年に世界で新型インフルエンザが流行した時、重症になる高齢者が比較的少ないことがわかりました。高齢者は、過去に新型インフルエンザに似たインフルエンザにかかり、交差免疫をつけていたためと考えられています。
シンガポールの研究チームは、感染経験のない健康な人37人を調べ、半数以上に新型コロナに反応する免疫細胞であるT細胞があったとしています。T細胞はウイルスの特徴を記憶し、次に侵入してきた時に攻撃することができます。過去に類似のウイルスに感染し、新型に対する一定の免疫も獲得している可能性を示しています。
人間に感染する季節性のコロナウイルスは4種類知られており、大半の人はかかっても軽い風邪症状で済みます。この4種類のうちのどれか、あるいは未知のコロナウイルスが、交差免疫をつけたとも考えられます。SARSを起こすコロナウイルスの研究では、T細胞による免疫の記憶は10年以上続く可能性があることがわかっています。
(2020年8月13日 読売新聞)
(吉村 やすのり)