新型コロナの子どもの重症化

新型コロナに感染する子どもが少ないことは、世界各国で報告されています。中国や米国、イタリアの調査では、感染が確認された人のうち、18歳未満が占める割合は2%以下です。また中国の調査では、感染や感染が疑われた子どものうち、9割以上が無症状か軽症、中程度の症状で、重症化したのは約6%です。感染しても大人と同じようにウイルスを広めるかどうかについては分かっていません。
感染した子どもの多くは、ウイルスが鼻にとどまっている可能性が指摘されています。新型コロナウイルスは、ヒトの細胞に侵入する際に特定の受容体に結合しますが、この受容体の遺伝子の量が10歳未満の子どもで少なく、年齢が上がるにつれ増えていくことが証明されています。
日本国内でも、感染者に占める子どもの割合は少なくなっています。厚生労働省のまとめによれば、5月27日の時点で10歳未満は278人(1.7%)、10~19歳は390人(2.4%)にとどまっています。重症者や死亡者の報告もありません。欧米では子どもに多い原因不明の川崎病に似た症例も報告されていますが、日本では見られていません。
日本小児科学会は、国が感染拡大の防止策としていち早く取り組んだ一斉休校や、その後の保育施設の閉鎖については、流行阻止効果に乏しいと指摘しています。学力の低下、屋外活動や社会的な交流が減ったことで抑うつ傾向に陥ったり、家庭内暴力や児童虐待のリスクが高まったりするなど、心身への悪影響の方が大きいと指摘しています。
子どもは感染に抵抗力を持つのか、ただ単に症状が出ないだけなのか、大人と同じくらいウイルスを広めるのか、このウイルスの感染には分からないことが多く、第2波が来る前に、一斉休校の功罪も含めた科学的検証が必要となります。

(2020年6月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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