新型コロナウイルスの変異種の拡大が止まりません。英国型は49の国と地域、南アフリカ型は19カ国で確認されています。ブラジルで発生したとみられる新たな変異種も日本で見つかっています。いずれも感染力が高いとされ、感染者の増加との関連が危惧されています。
急速に広がる英国型は、フランスやスペインなど欧州だけでなく、米国、インド、日本など世界49の国・地域で見つかっています。南アフリカ型も英国で市中感染が確認されているほか、旅行者を通じてフランスや日本、カナダなどでも発見されています。新型コロナの感染者と死者が世界最多の米国でも、英国型の変異種が急速に広がっています。
新型コロナウイルスは、平均15日で変異します。人の細胞に侵入したウイルスが、複製をつくる際に遺伝情報をコピーミスすることで変異が起こります。感染者が増えると、コピーミスする機会が多くなり、厄介な変異種が出現しやすくなってしまいます。感染能力が低いウイルスは淘汰され、より感染能力が高い変異ウイルスが広がっていきます。世界中で、多くの新しい変異種が存在すると考えられています。
これまでの研究では、英国型も南アフリカ型も感染力は高いものの、重症化のリスクは従来型と変わらないとされています。新型コロナウイルスも流行が長引いて感染者が増え続けると、毒性の高いウイルスに変異する可能性が否定できません。
変異種に対するワクチン効果については、英国型や南アフリカ型にも従来型と同等の効果があるとされています。たとえワクチンが効きにくい新たな変異種が登場しても、米ファイザー社は、6週間で対応できるとしています。メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、遺伝情報をもとに人工的に合成した核酸を使うため、短期間で製造できます。変異種に対応した新たなワクチンを迅速に製造できる準備をしています。
(2021年1月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)