慶應義塾大学などの研究チームは、新型コロナウイルス感染症で日本人が重症化しやすい遺伝的な特徴を見つけたと発表しています。研究チームは、国内100以上の医療機関と協力し3,400人以上の感染者の血液などを集めて遺伝情報を分析しています。免疫に関わる遺伝子であるDOCK2の周辺に特定の変化があると、重症化リスクが高まるとしています。欧米人にはほとんどなく、アジア人にみられる遺伝的な特徴だとしています。
日本人の血液型による重症化リスクの分析においては、AB型ではリスクが1.4倍高く、O型では同0.8倍と低くなっています。日本人が重症化しやすい免疫に関わる遺伝子のDOCK2周辺の特徴を持ち、かつAB型の人は日本人の約2%で、重症化リスクは2.8倍になるとされています。
慢性閉塞性肺疾患 (COPD)の患者では重症化リスクが5.7倍、がんで3.6倍、2型糖尿病で2.3倍に上がり、肥満では入院リスクが2.1倍、死亡リスクが1.5倍に高まるとしています。高血圧や喫煙もリスク要因となります。
今回の研究では、日本人が重症化しにくい未知の要因となる遺伝的な情報は見つかりませんでした。リスクの人種差は不明なままです。男性と女性では男性の方が重症化しやすく、男性の死亡者は女性の1.5倍程度と報告されています。男女で遺伝子の発現や免疫反応が異なるという要因も影響すると考えれています。
(2021年5月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)