新型コロナウイルス感染症の後遺症

中国・首都医科大学などは、2020年1~5月に中国・武漢の病院を退院した元患者約1,300人の経過を調べ、英医学誌ランセットに報告しています。そのうち約7割の人は、病院での治療時に酸素投与を必要としていました。発症から1年後に病院で確認すると、全体の49%が何らかの症状を抱えていました。半年後の時点では、68%が訴えており、減少してはいますが、依然高い割合でした。20%に倦怠感や筋力低下、17%に睡眠障害、12%に関節痛がみられています。
自己申告では、30%の人は激しい運動以外でも息切れすることがあり、26%が不安や抑うつを訴えていました。これらの症状は、発症から半年後よりも割合が増えていました。女性は一部の後遺症になるリスクが高く、倦怠感や筋力低下では男性の1.4倍、不安や抑うつでは2倍でした。このように、中国の報告では、入院した人の約5割は発症から1年後に何らかの症状を訴えていました。
英キングス・カレッジ・ロンドンなどは、2回目のワクチン接種から7日後以降に検査で陽性になった約900人を調べています。2回接種を終えてから感染するブレークスルー感染をした人のうち、症状が発症から28日以上続いた人は約5%でした。未接種の感染者のうち、同様に症状が続いた人は約11%だったことから、感染前に接種していると後遺症の発生が半分になっています。ワクチン接種は、感染を防ぐだけでなく、感染後の病気を改善し、後遺症を予防できるといえます。
子どもの後遺症は少ないとされています。約1,700人の子どもを対象にした研究によれば、5~17歳で症状が発症から28日以上続いたのは約4%と、大人の約13%と比べて少なく、56日以上では子どもが約2%なのに対し、大人は約5%でした。子どもへのワクチン接種を考えた時、後遺症を防ぐというメリットは大人に比べて少ないと思われます。

(2021年9月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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