国内で認められている新型コロナウイルス感染症の治療薬は、現在5種類あります。感染し、咳や発熱といった症状が出てしばらくは、体内でウイルスが増殖します。この時期は、抗ウイルス薬が効きます。国内初となったのが、昨年5月に特例承認された抗ウイルス薬レムデシビルです。酸素吸入が必要でなく、血中の酸素飽和度が93~96%の中等症Iの患者から幅広く使われています。しかし、腎臓や肝臓の機能が落ちている人への使用には注意が必要です。
新型コロナは発症からしばらくたつと、炎症反応が主になり、急性呼吸窮迫症候群など免疫反応の異常が出てきます。この時期の患者には、抗炎症薬や免疫抑制薬が有効になります。二つ目のコロナ治療薬として、ステロイド薬であるデキサメタゾンがあります。過剰な免疫が臓器に障害を与える反応を抑える働きがあります。酸素吸入が必要で酸素飽和度93%以下の中等症IIと、人工呼吸器を着けるなどの重症者を対象としています。
三つ目の薬として、今年4月に承認されたのが、バリシチニブ(オルミエント)で、炎症を抑えるはたらきがあります。もともとは関節リウマチやアトピー性皮膚炎の薬で、中等症IIや重症者を対象とします。飲み薬でレムデシビルと併用します。
四つ目の薬として、今年7月、軽症者や中等症患者向けの点滴薬が特例承認されました。2種類の中和抗体を組み合わせた抗体カクテル療法と呼ばれるカシリビマブ・イムデビマブで、ウイルスが細胞に感染するのを妨げることができます。医療機関での日帰り治療が可能となり、自宅療養中の患者に往診で使うことも認められています。
五つ目の薬となったのが、中和抗体薬のソトロビマブで、9月に特例承認されました。入院患者に限られています。さらに、軽症者用で飲むタイプの抗ウイルス薬の開発が進んでいます。自宅でも使いやすい飲み薬が実用化されれば、コロナ治療が新しい段階に進むと待ち望まれています。
(2021年10月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)