新型コロナウイルス感染症の致死率の低下

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界で新型コロナウイルスの感染に伴う死者数が累計500万人を超えました。5,000万人以上が死亡した1918~1919年のスペイン風邪の10分の1に達しています。
季節性インフルエンザなどと比べてなお死亡リスクは高いものの、先進国を中心にワクチン効果が浸透し、致死率はピークの3分の1以下に低下しています。ワクチン接種の進んだ先進国では死者数が減少する一方、接種率の低いロシアや中東欧では、感染の再拡大で死者数が過去最悪水準に達し、脅威はなおくすぶっています。
もっとも、ワクチンの効果は万能ではなく、接種しても感染するブレイクスルー感染のリスクは今後もくすぶっています。より重要なのは感染後に症状を重症化せず、致死率をいかに下げるかにかかっています。世界の累計死者数を累計感染者数で割った致死率は直近で2%程度と、ピークだった2020年春ごろの3分の1以下に低下しています。それでも0.1%程度とされる季節性インフルエンザなどに比べて、死亡リスクは高くなっています。
期待が高まっているのは治療薬の役割です。多くの飲み薬や抗体カクテルが治験の最終段階に進み、実用化が近い治療薬は50以上あります。ワクチンと治療薬、検査の拡充を組み合わせて、コロナを通常の感染対策で制御できる体制へと移行していく必要があります。

 

(2021年11月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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