新型コロナウイルス禍の報道について憶う

新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、緊急事態宣言が全国で延長されました。政府は4月7日に東京、大阪など7都府県に宣言を発令し、16日に全国に拡大しました。その後、外出自粛の効果が徐々に表れ始め、感染者の増加のペースは鈍化してきています。欧米で起きたような感染爆発は、今のところ回避できています。諸外国と比べて罰則のない緊急事態宣言に多くの人々が従い、完璧とは言えませんが、それなりの結果を出してきています。わが国は、先進国の中でも新型コロナウイルスによる死亡者も重症者もともに非常に少ない国と言えます。
中国は、コロナの流行が最初に始まった武漢市を強権的に長期にわたり都市封鎖し、最近封鎖解除にこぎつけました。習近平政権は、自らの国家体制の優位性をアピールしています。一方、わが国においては、苦い大戦経験から政治権力による強権発動には慎重を期すとの考えから、要請が基本となっています。強制力の弱さを危ぶむ声はありますが、これまでの感染対策に大きな誤りはなかったように思います。民主主義社会では、自ら協力する姿勢が生まれます。迅速性という点では、権威主義的な国家体制の方が有利であることは否めませんが、感染症対策においても、民主主義の成熟性が問われることになります。
マスコミは、連日PCR検査の必要性と充実を報道しています。検査体制の不備も指摘されています。無症状陽性者を見つけ出すには、巨大な検査能力が必要となります。わが国のPCR検査能力に壁がある現状を踏まえれば、検査率の低さもやむを得ない状況です。低いにもかかわらず、わが国の死亡率や重篤率が検査率の高い諸外国に比べて低いままです。問題点ばかり指摘するのではなく、この事実についても報道すべきです。
自治体が自粛要請に従わないパチンコ店を公表すると、マスコミがこぞって報道し、講義や脅迫が殺到する事態になりました。世の多くの人々が自粛を守っているため、社会秩序を乱す集団としてメディアは取り扱っています。感染リスクをゼロにすべきだという正論は、強い排除の力を生み出しかねません。個人が秩序を乱す者を排除したという感覚を、マスコミは排除に拍車をかけているように思えます。報道に携わる者は、現在でも3密と呼ばれる場所に出かけ、自由に取材しています。こうした報道機関の取材姿勢も問われます。

(吉村 やすのり)

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