新型出生前検査(NIPT)に憶う NIPT: noninvasive prenatal test

2012年8月29日の新型の出生前診断検査報道。この報道のキーワードは3つに集約される。「妊婦血液」「ダウン症」「精度99%」である。着床前遺伝子診断が目指した早期化と母体血清マーカー検査によるマススクリーニング化。ある意味でそれらが合体したNIPTには、考えるべき問題が多く存在する。

今回のNIPTの対象となっているダウン症は、出生前検査の創成期からその最初の対象であった。ダウン症が出生前検査の対象であることを当然視することによって、中絶を選択する疾患としての社会的基盤を確立してきたのではないだろうか。妊婦の血液を取るだけで、ダウン症かどうかほぼ確実に診断できることになれば従来の羊水検査に比し、安全で簡単にできることから安易な気持ちで検査を希望するクライエントが増加する懸念がある。検査をする医療者側から十分な検査の説明やカウンセリングを受けることなく、マススクリーニング検査として実施される可能性がある。

ほぼ確実に99%の精度で診断できると報道されているが、それはダウン症の頻度が高いとされるハイリスク群で実施した陽性的中率であり、ローリスク群では50%前後まで低くなり、羊水検査による確定診断が必要になる。なぜ検査を受けるのか、なぜ中絶を選択するのかの判断は決して容易なものではない。検査を受ける前にクライエント夫婦が考えなければならないことは大変多い。

現在、日本産科婦人科学会や日本医学会が中心となり、NIPTに関する指針案づくりを行っており、3月には記者会見が行われる予定である。当初は施設を認定した上で臨床研究として実施されることになっている。

 

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