新型出生前遺伝学的検査(NIPT)の認証施設の増加

胎児の染色体異常を調べる新出生前検査(NIPT)の認証施設が、400施設を超えました。NIPTは、妊娠9~10週以降に妊婦の血液中に含まれる胎児の染色体を調べる検査です。2本1組で計46本ある染色体数が異なると先天的な病気を発症する可能性があります。検査対象として、日本医学会が指針で定めるのは、成長や発達の遅れなどが生じる①ダウン症(21トリソミー)、②エドワーズ症候群(18トリソミー)、③パトウ症候群(13トリソミー)だけです。
日本医学会が設置した出生前検査認証制度等運営委員会が、要件を緩和したのは、認定を受けずに検査する施設が急増してしまったためです。2013年から日本産科婦人科学会は、独自に実施施設を認定していました。常勤の専門医や分娩の取り扱いなど要件は厳しく、認定施設は大病院を中心に全国約100施設のみで、対象も原則35歳以上としていました。このためインターネットなどで、年齢制限なし、休日検査も可能と宣伝する専門外のクリニックの参入が相次ぎ、2020、2021年の無認定施設数は認定施設を上回ってしまいました。
常勤の小児科専門医がいなくても、大病院など基幹施設と連携すれば認証するなど要件を緩和した新認証制度を2022年7月に導入しました。認証施設は連携施設を中心に、2023年4月時点で414施設と3.8倍に増えました。年齢制限も本人が強く希望すればという条件付きとなり、事実上撤廃されたことになりました。しかし、厚生労働省の研究班が新制度移行後にNIPTを受けた妊婦の検査施設を調べたところ、認証と無認証がほぼ同数で要件緩和前の2020年とほとんど変化はなく、ネット予約が可能な点や費用の安さといった利便性に関する点で、いまだに妊婦は無認証施設を選択しています。
無認証施設では、十分なカウンセリングもなく、メールや郵送で結果を伝えるだけの施設も多くなっています。もし陽性になっても、確定するための羊水検査を受ける医療機関を妊婦自身が探さなければなりません。羊水検査による確定診断を受けることなく、中絶を選択するカップルも少なくありません。妊婦も検査の限界を理解する上で、カップルの十分な話し合いやカウンセリングの機会を保障することが大切です。
美容外科クリニックを中心に全国で約100カ所の無認証施設を展開するある企業は、新制度後も検査件数はまだ増えると予測しています。無認証施設で検査を受ける流れを変えるには、認証施設を現在の約2倍となる800カ所以上に増やす必要があります。カウンセリング体制の充実も急務です。

(2023年7月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。