新薬が承認されるためには、有効性を評価するために臨床試験をしなければなりません。一般的には、既存の治療薬を投与する人と新薬を投与する人に分けて、性能と効果を確かめています。しかし、難病や希少疾患の場合、治療のための患者を確保する手間と時間がかかるほか、薬代などは製薬会社が原則負担します。これが創薬のハードルの一つになってきました。新薬開発には10年以上の期間がかかり、このうち臨床試験は少なくとも3年、長くて7年もかかります。研究を始めた化合物が新薬として世に出る確率は数万分の1とも言われ、新薬開発には多くの時間と数百億円規模の費用が必要です。
厚生労働省は新薬開発の手続きを見直すことにしています。新薬の臨床試験の一部で、人体に薬を投与しなくても、蓄積したデータで代替すれば、効果の検証ができるようにします。開発にかかる企業の負担を軽くする狙いで、データの種類を盛り込んだガイドラインを来年度にも整えます。ガイドラインは利用可能なデータの種類のほか、信頼性を確保するための要件を明記しています。データ改ざんを防止するための措置も考えられています。
(2018年3月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)