日中韓にみる超少子化の現状

 日本、中国、韓国の3カ国はいずれも、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が超少子化とされる1.5を下回っています。欧米では1.5を超える国も少なくなく、東アジアの深刻さが目立っています。日本は2024年の出生率が1.15と3年連続で過去最低になりました。2000年代にかけて出産適齢期を迎えた第2次ベビーブーム世代を就職氷河期が直撃した影響が大きく、保育所や育児休業制度の整備といった両立支援も遅れました。

 韓国の2024年の出生率は0.75でした。加盟国で唯一1を下回っています。子育て負担の重さから子は1人という世帯が多く、2022年の出生数に占める第1子の割合は57%とOECD加盟国で最も高くなっています。将来への不安を拭えず結婚をためらう若者も少なくありません。推計によると2072年の総人口は3,622万人となり、2022年比で3割少なくなります。

 中国も急速に少子化が進んでいます。2024年の出生数は954万人と、直近ピークの2016年から半減しています。1980年頃から続けた一人っ子政策により出産適齢期の女性が減っています。学歴信仰や若者の就職難を背景に教育熱も高まり、教育費が家計を圧迫する構図は韓国と同じで子は1人で十分と考える家庭は多くなっています。

 世界でも突出する日中韓に共通する深刻な少子化の背景としては、子どもに良い教育を受けさせないと親としての価値が無いという意識が強く、教育費の高騰に子どもを持つことを断念するケースが多くなっています。また、家事・育児の負担が女性に偏るなど、ジェンダー格差が影響しているとの見方もあります。男女格差の指標として世界経済フォーラムが公表するジェンダーギャップ指数で、日本は2024年に146カ国中118位、韓国は94位、中国は106位といずれも低迷しています。

 多くの先進国は1960年代から出生率の低下に直面しました。フランスやスウェーデンなどの北欧諸国は子育て世帯への支援を手厚くし、育休や保育サービスの充実に取り組みました。フランスは2006年に出生率2を回復し、スウェーデンも2008年に1.9を超えました。近年再び低下傾向にありますが、先進国では比較的高い水準を保っています。

(2025年6月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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