日本の労働分配率は40%台で推移し、50%超の米国に及ばず、先進国で最低水準です。上げられる賃金を抑え、海外への工場移転や内容量を減らし、価格を据え置く実質値上げなどの合理化を繰り返してきました。日本はコストカット型経済に陥り、デフレが続く悪循環になっていました。
日本は30年に及ぶデフレ下で、従業員の雇用を優先したことも賃上げの停滞に拍車をかけました。主要国の約20年の賃金水準の変化を購買力平価ベースで比較すると、米国が1.3倍、韓国が1.5倍に伸びる中、日本はほぼ伸びていません。物価高が続き、賃金上昇が追いついていません。物価高を克服するには、継続的な賃上げが必要です。
厳しい環境は変革の好機です。人への投資が長期的に企業価値向上につながります。人への投資を通じて商品やサービスの価値を高め、コストカット型経済からの脱却につなげなければなりません。2024年に4%を超える賃上げ率を達成できるかは、日本の30年デフレ脱却の是非を占う一つの焦点となります。
(2024年2月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)