日本の旅客機の遅れ

 世界屈指の正確さを誇った日本の旅客機が時間を守れなくなってきています。国土交通省によれば、2024年度の国内線の定時運航率は84%で、10年間で7ポイント下がっています。予定時刻から15分以内に飛び立った国内便の割合はコロナ禍を除き右肩下がりで、2010年度の94%から2016年度に80%台へ落ち込み、2024年度は過去最低でした。

 遅れが相次ぐ背景には空港の過密があります。2024年の国内発着便の運航回数は国内・国際線を合わせて99万回に上り、10年に比べ17万回増えています。コロナ前のピークだった2019年の102万回に迫る水準です。大型機から中・小型機に主力が移り、全体の便数が増え空港が過密になっています。激しくなる雷雨も遅れに拍車をかけています。

 便数が増えたのはインバウンドの回復に加え、効率を重視する航空会社側の事情があります。小ぶりの旅客機を頻繁に飛ばした方が客も利用しやすく、空席ができにくく、各社は250席前後の中型機や100席前後の小型機の採用を増やしています。エンジン性能が向上し、中型機でも日本から米東海岸などへ直行できるようになったことも後押ししています。大型機の割合は、2013年度の22%から2023年度は13%に下がっています。

 2024年の訪日外国人は3,600万人で、国は2030年に6,000万人に増やす目標を掲げています。日本発着の旅客機に定時に飛べないイメージが定着すれば、海外の旅行客に敬遠されかねません。国や航空業界は対策を急ぐ必要があります。

(2025年11月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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