日本の漁獲量の落ち込み

 農林水産省によれば、海で取る海面漁業の漁獲量は1980年代をピークに減少傾向にあります。2023年は282万トンと過去最低を更新し、ピーク時の4分の1ほどの水準です。鯖や秋刀魚、鮭類といった日本人の食卓を支えてきた魚種が激しく落ち込んでいます。背景には漁業者の不足があります。漁業の就業者数は、1960年代は60万人を超えていました。ここ数年は12万人ほどにとどまっています。高齢化も進んでいますが、収入や将来への不安などから新たな担い手を探すのは困難です。

 温暖化に伴って世界の海面水温は、100年あたり平均0.61度高くなっています。特に日本近海では、100年あたり1.28度と、世界平均の約2倍のペースで上昇しています。その影響を受け、様々な魚種について分布の北上現象が報告されています。北海道では鮭の水揚げが減る一方で、かつてはあまり馴染みのなかった鰤の漁獲量が急増しています。海水温上昇に伴う小型化現象も起きています。

 農林水産省は資源を回復させ、漁獲量全体を今の300万トンほどから、2030年度には444万トンまで引き上げる目標を掲げています。温暖化は猛暑や豪雨の増加をもたらすイメージが強いのですが、生物にも密接に関わります。このままでは、日本人が長年親しんできた種類の海産物が手に入りにくくなり、伝統的な食文化が失われていく恐れがあります。

(2024年11月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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