日本の研究成果を最も事業に生かしているのは米企業です。特許出願の際には、通常参考にした論文を明記します。その内容を調べた文部科学省科学技術・学術政策研究所によれば、2006~2013年に最も多く日本の論文を引用したのは米国で41.5%、25.2%の日本を大きく上回っています。特に顕著なのが基礎生命科学で、米国の比率は46.8%、日本は16.6%です。一方、日本の企業などが特許出願で最も引用したのは米国論文で44.1%で、日本は27.3%でした。
米国の研究開発力は世界トップですが、海外に目を向けている間に、国内のシーズを見落としていた可能性はあります。大学もこれまでは成果を産業応用につなげる発想に乏しかったことが要因の一つです。国内の有望なシーズをうまく開花させるには、産学が協調して課題克服に取り組む必要があります。
(2018年10月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)