経済データの国を超えた厳密な比較は、本来困難です。為替や労働環境の違いが影響します。為替をならしてみるには、多くの国で浸透する同じ商品の価格を突き合わせる考え方があります。国際的な物価指標として知られる外食大手マクドナルドのビッグマックをもとにした分析で、日本の賃金水準の低さが浮き彫りになっています。店舗で1時間働いて買えるのは2.2個と、2.5個以上の米国や英国に見劣りします。値上げほど賃上げが進まず、5年前に比べても0.2個減っています。
日本では、時給の中央値が1,047円で買えるのは2.2個のみです。オーストラリアなら3.9個、スイスなら3.4個、英国は2.6個、米国は2.5個です。ドイツやフランスを含むユーロ圏5カ国平均も2.5個でした。日本は過去5年間で0.2個減っています。下げ幅は比較可能な11カ国・地域でフランスに次いで大きくなっています。この間、時給は940円から11%の伸びにとどまったのに対し、ビッグマックは390円から23%値上がりしています。
時給をドル建てでみると、停滞は一段と際立ちます。日本は2019年に8.6ドルだったのが、2024年に7.0ドルに減っています。円安もあって、シンガポールや香港、韓国といったアジアの近隣国・地域に逆転を許しています。賃金の伸びは追いついていないのが現実です。
(2025年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)