日本人が1年間に医療機関を受診する回数は平均約13回であり、先進国の中ではかなり多く受診しています。このような患者の行動の背景にあるのは、保険証があればどこの医療機関にもかかることができる国民皆保険制度によると考えられています。国民医療費が年40兆円を超えて増え続ける今、過剰受診を抑えることが大きな課題となっています。
欧州では救急以外は原則かかりつけ医に診てもらう国が多くなっています。日本はどこでも自由に受診でき、大病院に直接行く人も多くみられます。同じ検査や投薬を重複して受けることで、年間約2兆円の医療費がかかっています。軽症で大病院を受診する人が増えれば、救急や重篤な患者を診る本来の役割を十分に果たせなくなる懸念もでてきています。来年度から紹介状を持たずに大病院を訪れた患者に対し、一定額に負担を求める制度が始まります。まずかかりつけ医を訪ねてもらい、大病院の受診が必要か判断することで、過剰診療を避ける狙いです。
(2015年9月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)