日本人留学生の減少

 日本人の海外留学が伸び悩んでいます。主に学位取得のために海外へ留学する大学・大学院生の数は、世界全体で2001年の210万人から2022年に690万人に増えています。同時期に日本への留学生数は8万人から23万人に増えています。しかし、学生全体に占める留学生比率を海外と比較すると、2008年の14位(2.9%)から2022年の30位(5%)になっています。

 特に米国への留学生は大きく減少し、ピークである1997年の4万7,073人から2023年は1万3,959人となり、留学生数で1位から13位に後退しています。1995年の4万5,531人と2023年を比較すると70%減少しており、同時期に韓国が19%、中国が7倍、インドが10倍以上に増えているのと対照的です。米国への留学生数が大きく減少したのは、学費高騰・円安など経済的理由に加えて、かつて多かった企業派遣留学生、日本の入試を避けて海外大学へ進学する学生が激減したのが要因と考えられています。

 最近、就職活動の早期化・長期化により、学生が留学を避けるようになっています。文部科学省による学生へのアンケート調査によれば、留学しない理由として、就活への影響が不安だからが4割以上に達しています。留学する学生は留年を覚悟しているようです。

 問題の解決には、海外のように就職活動の時期を卒業年次後半とすることも考えなくてはなりません。それができないなら、4年生の夏に帰国した学生を対象とする採用枠を設ける、留学中の学生がオンライン面接を受けられるようにする、通年採用を拡大するなどの対応が望まれます。留学を経験した学生は、コミュニケーション力、異文化に対する柔軟性、最後までやり抜く力などを身に付けており、企業にとっても魅力的な人材となります。

(2025年3月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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