日本企業の現金創出力の低迷

日本の企業は、10年前に比べ株主還元は3倍近くに増え、総額で研究開発費を上回るようになりました。しかし、その間、研究開発費や設備投資は5割前後の伸びにとどまっています。投資不足は現金創出力に表れています。将来への投資や還元の原資となるフリーキャッシュフローについて、日米の主要500社の中央値を比較すると、米国では10年で2倍に増え、日本では3割減っています。巨大企業が多い米に比べ、規模が10分の1にとどまるのは仕方がないとしても、伸びでも見劣りしています。
ITの比率が高い米国は、設備投資の負担が軽くなっています。一方、製造業主体の日本は、設備投資や在庫の確保で現金を生みにくい構造にあります。海外投資家をひきつけるには、還元だけでは不十分で、現金創出力を高める必要があります。
企業数が多くコスト競争に陥りやすい構造は、現金を生む力をそいできています。グローバル投資家が求める5,000億円程度の時価総額がある企業は、東証プライム市場に上場する約1,800社のうち300社に満たず、成長のための投資マネーもひきつけられていません。企業再編や事業の統廃合にも踏み込む大がかりな改革が必要です。

(2023年5月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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