日本医学会の検討委員会は、妊娠・出産を希望する子宮がない女性に対し、子宮移植を認める報告書をまとめました。慶應義塾大学のグループが生まれつき子宮のないロキタンスキー症候群の女性らを対象に臨床研究を計画しています。今後、開始に向け、学内倫理委員会に申請する方針です。
国内で子宮がない女性は、子宮筋腫やがんで子宮を摘出した人も含め、20~40代だけで6万~7万人と推定されています。ロキタンスキー症候群の女性は、卵子をつくる卵巣はありますが、子宮や腟がなく、4,500人に1人ほどの割合で生まれてきます。子宮移植は、子宮を移植して1年ほど様子をみたうえで、子宮に受精卵を入れることになります。移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤が必要になるため、出産が終われば子宮を摘出しなければなりません。
報告書では、脳死の人からの臓器提供が移植医療の基本だと強調していますが、国内では脳死の人からの子宮の提供は臓器移植法で認められていません。そのため、少数の患者に限った臨床研究で、健康な人が子宮を提供する生体移植を容認しています。提供者は、無償で自発的に同意することなどを条件としています。
(2021年7月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)